2014年7月9日水曜日

みなとみらいクラシック・クルーズ Vol.58 神奈川フィル名手による室内楽①<ティータイム・クルーズ>

2014-07-09 @みなとみらいホール

﨑谷直人(神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第1コンサートマスター 2014年4月より)
門脇大樹(神奈川フィルハーモニー管弦楽団 首席チェロ奏者)
梅村百合(ピアノ

マスネ:タイスの瞑想曲
カサド:無伴奏チェロソナタ 第3楽章
ハイドン:ピアノ三重奏曲 第25番 ト長調 「ジプシー・ロンド」Hob.Xv:25



マスネの「タイスの瞑想曲」はあまりにも有名だけど、元歌というべき歌劇「タイス」の話は全然知らなかったが、プログラムによれば、修道士アタナエルが娼婦タイスと出会い、その堕落した生活を改めるように説教して信仰への道に導く。彼の努力が実を結びタイスは修道女として生きる道を選択した。ところが、アタナエルはタイスが忘れられず、恋い焦がれて悶え苦しむ…という話で、(人によるが)信仰というものの薄っぺらい仮面を剥いでみせるようで興味深い。
タイスはその瞑想の中で、神への祈りを込めたのだろうか、それとも彼女もアタナエルへの恋慕と闘っていたのだろうか。

これから「タイスの瞑想曲」を聴くときはきっとこの話を思い出すだろうな。

現代スペインの作曲家にして高名なチェリスト、カサドの無伴奏チェロ組曲は、僕にとって、この曲しか知らないし(CDを持っている唯一の作品)、生で聴くのも初めてだった。
スペイン情緒たっぷりの名品でできれば全3楽章を聴きたかった。

ハイドンCD全曲聴破は、交響曲の前半1/3で頓挫しているので、今日のピアノトリオ第25番は多分今回のステージで初めて聴いたように思う。
通称「ジプシー・トリオ」とか「ジプシー・ロンド」という呼び方に記憶があったので、あるいはどこかで聴いたことがあったのかもしれない。

まさにハイドンとはこれだ、というような軽妙な味わいだ。
しかし、第3楽章が意外な展開で、なるほど「ジプシー」と呼ばれるのは納得。
西洋古典音楽の王道のような旋律とハンガリー民謡風のメロディーが輪唱するのだ。チャールダーシュの後半部分のような印象を受けた。とても面白い曲だ。

さて、今日のトリオは特に楽団名も付いていない俄ごしらえだろうが、弦の2人は同じオケのメンバーだしアンサンブルはお手のものだろう。

ピアノの梅村女史は1月に声楽リサイタルの伴奏者として聴いていたが、今日はトリオの一員として存分に技量を発揮できたのではないか。感じのいい人だ。

ちょうど1週間前に同じ場所でチャイコフスキーのピアノトリオを聴いたが、その時は3者のバランスに残念感があったが、今日はピアノが控えめというか、バイオリンとチェロをよく聴きながら演奏していたのではないか、と思った。実に良いバランスだった。

♪2014-68/♪ @みなとみらいホール-29