2014年7月11日金曜日

平成26年7月社会人のための歌舞伎鑑賞教室「傾城反魂香」

2014-07-11 @国立劇場大劇場


中村 梅玉(又平)
中村 魁春(又平女房おとく)
中村 東蔵(土佐将監光信)
中村 歌女之丞(将監北の方)
中村 梅丸(土佐修理之助)
中村 松江(狩野雅楽之助)
ほか

-----------------------

解説 歌舞伎のみかた    澤村 宗之助                                   
              
近松門左衛門=作
傾城反魂香 (けいせいはんごんこう)一幕
 土佐将監閑居の場


今月の歌舞伎教室の解説は、真っ暗な回り舞台に幻想的な照明の下で、舞台が回転しながら、幾つもあるセリが徐々に上がってきて、順番に沈んでゆくという大仕掛な舞台の説明から始まった。

その後澤村宗之助が登場し、特に黒御簾音楽の効果について中心に説明が行われ、今更ながら感心した。

その上で、本篇の「傾城反魂香」を観たので、なるほど、ここであの音楽(浄瑠璃、太鼓、鼓、笛、ツケ打ち=舞台上手の端っこで板を打つ)が生かされているな、ということが分かり、歌舞伎の楽しみ方が一段深まったように思う。

近松門左衛門作「傾城反魂香(けいせいはんごんこう)」(土佐将監閑居の場)は、元々人形浄瑠璃のための作品で、後に歌舞伎に移されたものだそうで、それだけに浄瑠璃(義太夫)の語りがとても重要な役割をしているのが素人目にもよく分かる。
役者の動きがあたかも人形のようにさえ見えるのもそのせいだろう。

役者のセリフ回しと義太夫の語りが丁々発止のやりとりをして、実に面白い。
おまけに、今回のステージでは歌舞伎入門教室として演じられたために、義太夫部分は舞台両袖に電光字幕が用意されたので、完璧に理解できたのもありがたかった。
何しろ昔の言葉遣いであるために聴き取れても意味が分からないこともよくあるのだけど、漢字で表示されるとよく分かる。



「どもり」は差別用語であるとして今では「吃音」と言われるが、この古典作品ではそのままで表現されるのは致し方ないことだろう。主人公又平は「どもりの又平」として歌舞伎ファンでなくともその名前は知られているのではないだろうか。

才能はありながら話がうまくできない絵師又平は師匠の土佐将監から、土佐の苗字を許されないでいたが、女房おとくとともに師匠の隠居を足繁く通い、なんとか認めてもらおうと努力していたが、弟弟子修理之助に先を越され、師匠にもさじを投げられ、夫婦とももはやこれまでと自害を決心し、最後の名残に師匠宅の庭にある手水鉢に自らの絵姿を描くとそこに奇跡が生じて、思わぬ展開になるという話。

この吃音で必死に自分の気持を表現しようとする又平の演技は哀れを誘う一方で、亭主の口下手を補う女房おとくの滑舌の良さが好対象で掛け合い漫才のようでもあるが、二人して死を覚悟する場面などなかなか胸に迫るものがある。

最後は、又平おとくの仲の良い夫婦が滑稽味をだして安堵の笑いと喝采の中に心持ちの良い幕となった。

♪2014-70/♪ @国立劇場大劇場-04