2014年3月23日日曜日

読売日本交響楽団第70回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2014-03-23 @みなとみらいホール


パク・ヘユン:Vn
クリスチャン・ヤルヴィ指揮:読売日本交響楽団

ジーン・プリッツカー:「クラウド アトラス」交響曲から第4、5、6楽章(日本初演)
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
ブラームス(シェーンベルク編):ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 作品25(管弦楽版)

今日は興味深いプログラムだった。

第1曲めが、ジーン・プリッツカーという作曲家による「クラウド アトラス」交響曲全6楽章から後半の第4、5、6楽章でこれは日本初演(正確には昨日東京芸術劇場で同じプログラムが演奏されている。)ということだった。
1971年生まれという若い作曲家によって作曲され、世界初演されたのは2012年。ホットな超現代曲だ。

この作品が僕にとって興味深いのは、新しい作品で日本初演というからではない。

ちょうど1年前の3月に日本で公開された映画「クラウド アトラス」は難解だが興味深い作品だった。その中で重要な役割を果たすのが「クラウド アトラス六重奏」で、この音楽は別の作曲家3人の手になるものらしいが、その際にジーン・プリッツカーもオーケストレーションや追加の音楽を提供した。

「クラウド アトラス」交響曲はこの映画でバックに流れていた「クラウド アトラス六重奏」を発展させたものらしい。

短いメロディが一定のリズムを刻んでひたすら繰り返される、いわゆるミニマル・ミュージックが母体となっているようだ(後半3楽章しか聴いていないから全体はどうかわからないが。)。

まさに映画「クラウド アトラス」の物語を思い起こさせる、刺激に満ちた音楽だった。

映画の方もビデオディスクを観直したいが、交響曲も全6楽章を聴いてみたいものだ。


2曲めも映画に関わりが深い。
エリック・ウォルフガング・コルンゴルト(コーンゴールド)(1987~1957)は、ナチスの迫害を逃れて米国に渡ったユダヤ人で、元々は純粋なクラッシック音楽を作曲していたが、縁あって映画音楽に携わることになり、1936年のアカデミー賞作曲賞を受賞したほか3回ノミネートされている。
アカデミー賞を受賞した時の映画は「風雲児アドヴァース」という作品で、もちろん存在さえ知らなかったが、データベースを調べるとオリヴィア・デ・ハヴィランド(「風と共に去りぬ」のメラニー!)が主演している。
これは観たいなあ、とAmazonをチェックすると、VHSの中古で7,000円。もう再生できないよ。

ああ、だいぶ脱線した。
コルンゴルトもその音楽人生でハリウッドに関わったために純クラッシックの楽壇からは脱線したとみなされていたらしい。近年その再評価が進んできたそうだ。
もとより、映画音楽が純クラッシックより低水準というわけではないだろうが、物語に奉仕するという意味では作曲家にとっては制約を受けることになるだろう。

今日のバイオリン協奏曲は1945年の作品なので映画音楽から再び純クラッシックに戻りはじめの頃らしい。
とはいえ、全3楽章はそれぞれに過去の自作映画音楽から主題を取り込んでいるという。

そのせいか、まさしくこちらも現代音楽ではあるけど、耳に心地よいメロディーも散りばめられていてやはり上質の映画音楽のような気がした。


3曲めが、ブラームスのピアノ四重奏曲第1番だが、シェーンベルク(無調音楽=12音技法の創始者)が1937年に管弦楽用に編曲したもの。
原曲は好きで何度も聴いているけどオーケストラで聴くのは初めて。ブラームスが無調音楽になった訳ではなく、シェーンベルクは原曲に忠実に編曲しているので、全体を聴くと交響曲を聴くような感じだ。
最初は不慣れで違和感があった。いや、3楽章までは、わざわざオーケストラにする必要はなかったのではないかと、凡人は思ったのだけど、終楽章に来てああこれはオーケストラのほうが断然いいや、と腑に落ちた。
終楽章だけなら(ブラームスの)ハンガリアンダンスの1曲に加えても少しも違和感がない。ミュージカルの「屋根の上のバイオリン弾き」を思わせるメランコリーで叙情性たっぷりの音楽が、原曲より増幅されていて面白い。

シェーンベルクというといかにも現代の作曲家という感じだが、年表を繰ってみるとブラームスとは20年余を共に生きているのだから青年時には晩年のブラームス本人に会っているのかもしれない。ロマン派の巨匠と12音音楽もかなり接近しているのにちょっと驚き。


バイオリンソロのパク・ヘユンは初めて。
今日は初めて尽くしだったなあ。
名だたる国際コンクールを史上最年少で優勝した才能ある若手。良く鳴るバイオリンで不満なし。

というか、今日は、どの作品もとても満足できた。


♪2014-24/♪みなとみらいホール12