2024年6月4日火曜日

東京都交響楽団 第1000回 定期演奏会Bシリーズ

2024-06-04 @サントリーホール



エリアフ・インバル:指揮
東京都交響楽団

【定期演奏会1000回記念シリーズ⑤】
【ブルックナー生誕200年記念】
ブルックナー:交響曲第9番ニ短調 WAB109
(2021-22年SPCM版第4楽章付き)[日本初演]



都響の定期1000回記念シリーズの真骨頂、今日が本当の1000回目。という訳で大作が選ばれたのだろう(N響2000回に比べるとちとお粗末だけど。)。

ブルックナーの9番は珍しくない(全10作中一番聴いた回数が多い!)が、未完成の本作の演奏に当たっては、完成された3楽章までを演奏するものがほとんどで、稀に作曲家本人が指示したという自作の「テ・デウム」を続けて演奏したものも聴いたことがある。

今日は、4人(そのイニシャルがSPCM)が補筆して完成したという第4楽章も続けて演奏された(日本初演)。
これがプログラム上23分と予定されており、本編1-3楽章と合わせて約83分という長尺となった。

1000回記念ということで力が入っていたのか、今日も当然のように弦16型の大編成だったが、冒頭の響がとても美しい。いや初めだけでなく、最後までアンサンブルの良さは崩れなかった。
大編成の都響がサントリーで演奏しているとは思えないほど聴き応えのあるアンサンブルだった。

ほぼ全編大袈裟で刺激的で賑やかで長い、というのは困ったものだけど。

今年88歳のインバルの矍鑠としていること!
今日の上出来はこの人の牽引力だったのかな。

♪2024-078/♪サントリーホール-11

新国立劇場オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」

2024-06-04 @新国立劇場



【指揮】飯森範親
【演出】ダミアーノ・ミキエレット
【美術/衣裳】パオロ・ファンティン
【照明】アレッサンドロ・カルレッティ
【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

フィオルディリージ⇒セレーナ・ガンベローニ
ドラベッラ⇒ダニエラ・ピーニ
デスピーナ⇒九嶋香奈枝
フェルランド⇒ホエル・プリエト
グリエルモ⇒大西宇宙
ドン・アルフォンソ⇒フィリッポ・モラーチェ

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト:
歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」
全2幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約3時間30分
第Ⅰ幕
 90分
 --休憩30分--
第Ⅱ幕
 90分




「コジ〜」を初めて観たのは40年以上前。それが初めての日生劇場オペラだった。つまらなかった。
以後、何度も観ているしビデオも数種類あるが、ほぼすべて話に腑に落ちない。どんなに演出に工夫をしても台本を変えられない以上、話が腑に落ちるはずがない。

とはいえ、実は、過去に観た中で一番腑に落ちそうなのが新国立劇場の2011年以降今回に至る演出だ。2013年から観たのだけど、11年も前の舞台を細部まで覚えていないけど基本的に同じに再現されていたと思う。

D.ミキエレットの演出だけは、やや腑に落ちるというのは、結末が、そりゃそうでしょう、そうでなくちゃ、という気にさせるから。
つまり、圧倒的多数の演出が、最後強引にめでたしめでたしで終わらせるのに対して、この演出では、4人の男女が気持ちを収めることができずバラバラに舞台をさってゆくのだ。
同じ台本を使いながらよくまあ、こんな始末の付け方が不自然さもなくできたものだと感心するが、人間ドラマとしては当然だ。

設定は、本来の18世紀のナポリから現代のキャンプ場に変更された。
それで大きな破綻はなかったものの、なぜわざわざ設定を変える必要があったかは見えてこなかった。

今回は、歌手陣が良かった。
特に大西くんと九嶋ちゃんの大健闘が素晴らしい。海外勢以上の魅力・迫力だ。
13年の公演では姉妹2人が傑出していたと記憶しているが、今回はちょっと地味だったな。

おかげで、久しぶりにモーツァルトの才能をとことん味わった気がする。なんて素晴らしいオペラだ。

しかし、演出には工夫が必要。
今後も万事めでたしなんてやっていたら、いずれ女権拡張活動家に上演禁止を求められると思うよ。

♪2024-077/♪新国立劇場-08

2024年5月30日木曜日

東京都交響楽団 第999回 定期演奏会Aシリーズ(井上道義:都響最後の演奏会)

2024-05-30 @東京文化会館



井上道義:指揮
東京都交響楽団

ベートーべン:交響曲第6番ヘ長調 op.68「田園」
ショスタコーヴィチ:交響曲第6番ロ短調 op.54




ミッキーが都響を振る最後のコンサートだった。
ベト・タコ6番で有終の美を飾ったのは何故か分からない。

田園についてはミッキーらしい仕掛けもあって大いに楽しめた。
開演前に、田園については演出上客電を暗くするという注意があった。すると4楽章では客席と舞台にレーザー光線で雷鳴を光らせるのか、と思ったが、何にもなくて、何で暗くしたのか分からない。むしろ暗い客席との因果関係は分からないが楽章間の咳払いの賑やかなのには驚いた。

驚いたと言えば、第3楽章に入る時、上手の袖から管打の6人が入場し、何か変わったことでもやるのかと思ったら、普通に演奏をした。何だよ、この演出。
要するに、3楽章からしか出番のない6人が、途中入場しただけだよ。どういう意味があったのか分からない。
でも、Tp2、Tb2、Pic、Tympは3楽章まで出番がない。
Tbについては4楽章まで出番がない、ということがよく分かった。それは、まあ、勉強になったかな。

意表を突き、かつ、効果的だったのは、弦の編成を極小にしたことだ。「運命」でも16型でやる都響が、ミッキー版「田園」では8型なのだ(8-6-4-4-2)。まるで室内アンサンブルのような弦の響は、透明感があり、シャキシャキと明瞭で、あゝこういう「田園」を聴きたかった!と思い起こさせて、実に好感を持った。

もちろん、8型で前半6番をやったなら、当然後半の6番は16型で驚かすのだろうと思ったが、果たしてそのとおりだった。

過去数回しか聴いたことがないタコ6番(直近では18年秋の都響)。ほぼ初聴きに等しい。30分強のコンパクトな作品だし、それなりに楽しめたけど、先日のN響ニールセン2番を思い出して、ニールセンの方がずっと楽しめたと思った。第一、演奏力がだいぶ違った。
いつも思うが、16型にすればリスクも増える。前半のざわざわとまとまりの悪いアンサンブルは田園の透明感に比べたら話にならない。ただ、後半は大編成が生きてきて、終わりよければすべてよし。

カーテンコールはサービス精神旺盛なミッキーショウで大いに盛り上がった。

♪2024-076/♪東京文化会館-05

ランチタイムコンサート〜音楽史の旅 2024年① 〜ブラームスのピアノ〜

2024-05-30 @かなっくホール



倉田莉奈:ピアノ
司会・解説:飯田有抄(音楽ファシリテーター)

〜オール・ブラームス・プログラム〜
●16のワルツ Op.39 第15番 変イ長調「愛のワルツ」
 <1865年=32歳>
●ピアノソナタ Op.5 第3番 ヘ短調 第1楽章
 <1853年=20歳>
●2つのラプソディ Op.79 第2番
 <1879年=46歳>
●4つの小品 Op.119
  第1曲 間奏曲 ロ短調
  第2曲 間奏曲 ホ短調
  第3曲 間奏曲 ハ長調
  第4曲 ラプソディ 変ホ長調
 <1893年=60歳>
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●3つの間奏曲 Op.117 第1番変ホ長調
 <1892年=59歳>

作曲時の年齢は1833年(生まれ)と作曲年の差




恒例「音楽史の旅」。今年の前半はブラームス。
今日、第1回目はピアノ曲。

年代別サンプル集のようなプログラムだったが、それが良かった。
ブラームスはどの分野も好きだが、曲を聴くときに作曲年代を意識して聴くことはほぼなかった。
それで、ピアノソナタなんぞ、その風格から中年以降の作ではないかとばかり思っていたけど、3曲とも20歳前後の作だったとは驚いた。因みにバイオリンソナタの3曲は40〜50歳台の作曲で、こちらはなるほどと思うが。

今日は、1曲丸ごとは最後の4つの小品Op.119だけで、他は複数曲で構成される作品の中から1曲(1楽章)のみだったが、最初の導入としてよく知られている「愛のワルツ」から始まったものの、その後は年代毎の作品を並べて、作風がどう変化するかを聴き比べることができた。

と言っても、60歳の作品「4つの小品」を除けば、年代毎の特徴を顕著に理解した訳ではないけど、やはり、およその年代を頭に入れて聴くべきだなと思った次第。

もう一つ、印象に残ったのは、ピアノの音の素晴らしさ。
昨日のフィリアのStwもきれいだったが、今日はほぼかぶりつきの正面で聴いたせいもあったろうが、何と明瞭なことか。
前から響の良いホールではあるけど、今日のYAMAHAは本領を発揮したような煌めきがあった。

♪2024-075/♪かなっくホール-01

2024年5月29日水曜日

神奈川フィルの名手による室内楽シリーズ第18回 「フォーレ&ショーソン:フランス室内楽の名品」

2024-05-29 @フィリアホール



Vn:石田泰尚/直江智沙子*/小宮直
Va:大島亮*
Vc:上森祥平*
Pf:津田裕也*

フォーレ:ピアノ四重奏曲第1番ハ短調 Op.15*
ショーソン:バイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲ニ長調 Op.21
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ショーソン:バイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲ニ長調 Op.21から第2楽章




今回は、神奈川フィルの弦メンバーの中でも石田組長ほかトップクラスが集結した。

フォーレとショーソンと言われたら、俄然フォーレが楽しみで、そのピアノ四重奏曲第1番は過去屡々聴いている(なぜか2番は聴いたことがない?)。
ショーソンの今日の作品は初聴きだ。編成が2人大きく演奏時間も長いので、後半に置かれたのだろうけど、なんとなく消化試合みたいな気持ちでいた。

前半のフォーレがまず良かった。

良席が取れず(組長が入る回は難しい。)、2階最前列正面だったが、これが音圧も十分で、案外良い響だ。でも、もしかぶりつきで聴いたたらどんなに迫力があったろう、とは思いながら聴いたが。

休憩を挟んで、初聴きのショーソン。
タイトルどおり弦楽四重奏に独奏バイオリンとピアノが加わったもの。それで組長だけは立奏した。帰宅後Yotubeで調べたら、見た限りですべて同じスタイルだった。弦楽四重奏がオケの役割を果たすバイオリンとピアノのための協奏曲なのだ。

で、始まってみると、なんとも魅力的だ。
こ難しさがなく、分かり易い。
特に弦楽四重奏部分が、通常の室内楽とは明らかに異なる役割を受け持って、Tutti、それもユニゾンの部分が何箇所も登場した。そこは、独奏のバイオリンやピアノとの”協奏”を際立てて面白い。

組長のバイオリンは、いつものとおり、繊細で美しい。

終わってみると、やはり、これはショーソンが主役だったなと実感。
アンコールで、もう一度聞いてみたいと思った中間楽章…その第2楽章をやってくれたのもとても良かった。痒い所に手が届く気配り?

♪2024-074/♪フィリアホール-06

2024年5月25日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 県民名曲シリーズ第20回「嗚呼、昭和のレトロ・クラシック!」

2024-05-25 @県民ホール



沼尻竜典:指揮
松田理奈:バイオリン*
松下美奈子:ソプラノ**
池辺晋一郎:司会

【第1部】
スッペ:喜歌「軽騎兵」序曲
ケテルビー:ペルシャの市場にて
レハール:ワルツ「金と銀」
ヴォルフ=フェラーリ:歌劇「マドンナの宝石」から<第2幕への間奏曲>
ポンキエッリ:歌劇「ジョコンダ」から<時の踊り>

【第2部】
ヘンデル:歌劇「セルセ」から<オンブラ・マイ・フ>**
池辺晋一郎:大河ドラマ「黄金の日日」からテーマ
エルガー:愛のあいさつ*
クライスラー:中国の太鼓*
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン*
スメタナ:連作交響詩「わが祖国」から<モルダウ>
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オッヘンバック:喜歌劇「天国と地獄」から<カンカン>




クラシック音楽自体が、そもそもレトロで”クラシック”なのだから、今回の企画は”変”ではあるけど、確かに、平成以降ほぼ聴かなくなったような音楽もあったな。

加えて、前半の<時の踊り>以外の4曲はいずれも中・高時代に吹奏楽で演奏したものなので、実に懐かしかった。

昭和マニア?の沼さんと昭和の生き字引のようなダジャレの池辺さんによる漫談擬の話も面白くて、客席も舞台も大いに盛り上がった。

後半の選曲は特に<昭和>は無理があったね。トリを飾った「モルダウ」なんて神奈川フィルで3月に「我が祖国」全曲を聴いたばかりだけど、しかし、しみじみと美しい音楽だと思ったよ。

♪2024-073/♪県民ホール-2

2024年5月24日金曜日

横浜バロック室内合奏団定期演奏会109回 〜ドイツバロックの華

2024-05-24 @みなとみらいホール



横浜バロック室内合奏団
 Vn:小笠原伸子**/有馬希和子**/藤村陽子*
 Va:大本綾子
 Vc:中垣文子
 Cb:大西雄二
 Cemb:林則子

 Ob:松岡裕雅***
 Fl:高野成之****

J.S.バッハ:オーボエとバイオリンのための協奏曲ニ短調 BWV1060*
J.S.バッハ:2つのバイオリンのための協奏曲ニ短調 BWV1043**
C.P.E.バッハ:オーボエのための協奏曲変口長調 Wq.164***
J.S.バッハ:管弦楽組曲第2番ロ短調 BWV1027****
----アンコール-----------------
J.S.バッハ:G線上のアリア
J.S.バッハ:主よ、人の望みの喜びよ
 * ** *** ****は独奏者



今日までの1週間のオケはショスタコーヴィチ10番(日フィル)、マーラー3番(読響)、ニールセン2番(N響)と息苦しいまでの大編成ばかり続いた。

今日は、最大でも8人というバロックアンサンブルがとても新鮮。
バッハ(J.S.とC.P.E.)のOb、Fl&Vnの協奏曲というよく耳に馴染んだ心地の良い、そしてどこかメランコリックな調子にも癒された。
横バロの出来としても近年出色のアンサンブルだった。

気候もあまり暑くなく、気分がいいので臨港パーク経由で家まで歩いて帰ったよ。

♪2024-072/♪みなとみらいホール-18