2025年5月31日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第407回横浜定期演奏会

2025-05-31 @みなとみらいホール



ガボール・タカーチ=ナジ:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団
三浦謙司:ピアノ*

シューベルト:交響曲第7番ロ短調 D759「未完成」
モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番ハ長調 K.467*
コダーイ:組曲《ハーリ・ヤーノシュ》 op.15
 (ビオラ独奏:安達真理)
-----------------------------
シューマン:3つのロマンスから第2番*
バルトーク:ルーマニア民俗舞曲





昨日、神フィル室内楽でバルトークとコダーイを聴いた。
コダーイなんて、「ハーリ・ヤーノシュ」くらいしか知らないなあ、と思っていたが、今日、プログラムはすっかり忘れて出かけたら、なんとその「ヤーノシュ」がメインだった。

全3曲とも、珍しく楽しめなかったが、最後の最後のオケEncがなんとバルトークの「ルーマニア民俗舞曲」で、これも昨日Vn+Pf版を聴いたばかり。
しかし、これが良かった。9回2アウトから満塁ホームランで逆転勝利という感じ。


シューベルトは冒頭のVc(+Cb)の音があまりに弱音すぎて音楽になっていない、と感じた。Vnの刻みも極端に小さい。それでいて、Ob+Clの主題は、弦の序奏に見合うような弱音は出せないので、浮いてしまっている。このアンバランスでもう興醒めした。
その後の2曲でも、弦(特にVc)は極端なほど抑えられている。

モツPf協21番も、弦は10型なのはいいが、弦全体が抑制されているのでモダンピアノが(かなり抑え気味に弾いていたがそれでも)浮いてしまう感じで、全体のバランスが良くない。

オケ自体は、良い演奏だと思ったが、タカーチの独自さについてゆけなかったよ。

しかし、Encが上出来で、終わりよければすべてよし。
ご本人も相当ご満悦で手応えを感じたんだろうな。

♪2025-069/♪みなとみらいホール-13

2025年5月30日金曜日

神奈川フィルの名手による室内楽シリーズ20 〜ハンガリー 室内楽の名品〜

2025-05-30 @フィリアホール



第1バイオリン:石田泰尚
第2バイオリン:直江智沙子
ビオラ:中恵菜
チェロ:上森祥平
ピアノ:津田裕也
クラリネット:齋藤雄介

バルトーク(セーケイ編):ルーマニア民俗舞曲 BB68/Sz.56 ⇒直江・津田
コダーイ:バイオリンとチェロのための二重奏曲 Op.7 ⇒直江・上森
バルトーク:コントラスツ BB116/Sz.111 ⇒石田・齋藤・津田
バルトーク:弦楽四重奏曲第4番 BB95/Sz.91 ⇒石田・直江・中・上森



このシリーズの半分は聴いているけど、今回は、一番手強い選曲だったかも。
バルトークのコントラスツはどうも初聴きだったようだが、それ以外は少なくとも1度は聴いているし、ルーマニア民俗舞曲のように数え切れない程頻繁に聴いてよく耳に馴染んでいるものもあったが、ルーマニア~以外は、馴染みの問題だけでなく、そもそもの音楽性についてゆけない。

しかし、かぶりつきで聴く室内楽は、楽器本来の音の良さを味わえ、メンバーの丁々発止がスリリングで面白い。

いつも思うが、石田組長の繊細さ。
とにかく、楽章毎に調弦を繰り返す。
そんな短時間で音が狂うとは思えないし、基準音を確認する訳ではなく、A弦に合わせて他の3弦を合わせ直すのだけど、結局、一度緩めてから締め直すだけで、それならそのまま弾けばいいのではないかと思うが、気になるんだろうな。一種の儀式みたいになっているんだと思う。

♪2025-068/♪フィリアホール-02

2025年5月24日土曜日

青山シンフォニーオーケストラ 第37回定期演奏会

2025-05-24 @ミューザ川崎シンフォニーホール



横島勝人:指揮
青山シンフォニーオーケストラ
町田正行:チェロ*

モーツァルト:交響曲第25番ト短調 K.183
エルガー:チェロ協奏曲ホ短調 Op.85*
ドボルザーク:交響曲第8番ト長調 OP.88
-----------------------
カザルス:鳥の歌*
ドボルザーク:スラブ舞曲第10番
ヘンデル:ラルゴ





青山オケって聞いたこともないけどアンタどこのだれ?
という感じで、たぶんアオガク関係者のOBオケだろうなと思っていたが、事前に調べなかったので情報はなく、本番のプログラムにも何に書いてない。帰宅後NETでHPをみて初めて正体が分かったが、予想どおりだった。
アオガクOBオケが母体で、今は、広く同好の士を募っているみたいだけど、青山と名乗る以上、全く無関係では入りにくいだろうな。

定期演奏会は年に1回というから、まあ、多くの弱小アマオケの一つなんだろうな。

チケットを買った当時は、そういう事情も知らなかった。
偏に、エルガーのVc協を聴きたかったからだ。

過去平均では、2.5年に1回の割で聴いている。前回が22年1月都響だったので、まあ、平年ベースなのだけど、最近、この胸を掻きむしられるようでつらくてたまらない激しい音楽に飢えている?というか、なかなか決定版が聴けないのだ。

それで、青山の何たるかはどうでもいいから、聴くことにした。

今日、初めて聴いたオケだが、まずは全体が高水準。
指揮者も初めてだが、ちょいちょい見せる独自解釈が聴き慣れたものとは違うというだけで、あれも悪いとも言えないだろう。ただ、エルガーは、なんかまとまりに欠け求心力がなかった。ドボ8に至れば、一層入り込めなかった。

その、エルガーだが、独奏者はもちろん初めて。華々しい経歴もないけど、主として指導者として活躍をしている人らしい。このオケのトレーナーでもあるという。

久しぶりにスポットライトを浴びたのだろうけ、いやはや上手なものだ。何より、音が美しい。はじめて宮田大を聴いた時の驚きを彷彿とさせる美音の連続。

しかし、いつ、誰を聴いても、問題は、独奏がオケに負けているということだ。

これは、もう、どうにもならないと思うよ。
ピアノ以外、オケと対等に鳴らすなんてできない。

PAを使うのは邪道だけど、協奏曲ではやむを得ない。
思い切って、マイクで拾って生々しい音を増幅してみてはどうだろう。ギターではそういう試みを聴いたことがある。チェロでも(超現代曲ではあったが)PAを使った協奏曲を聴いた。
そりゃあもう安心だよ。
ヤニの飛び散る音を拾って増幅してくれえ!

♪2025-067/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-05

2025年5月23日金曜日

横浜バロック室内合奏団定期演奏会113回 〜協奏曲の饗宴

2025-05-23 @みなとみらいホール



横浜バロック室内合奏団
 独奏者
 FI:高野成之
 Vn:小笠原伸子
 Cemb:林則子

パッヘルベル:カノン
チマローザ:2つのフルートのための協奏曲
J.S.バッハ:バイオリン協奏曲第2番ホ長調
J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第4番、第5番
J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第5番
----アンコール-----------------
J.S.バッハ:G線上のアリア



◀️感想省略▶️


♪2025-066/♪みなとみらいホール-12

2025年5月22日木曜日

ランチタイムコンサート〜音楽史の旅 2025年① 〜フランスのピアノ〜

2024-11-28 @かなっくホール



倉田莉奈:ピアノ
司会・解説:飯田有抄(音楽ファシリテーター)


オール・ラヴェル作品
Ⅰ  水の戯れ
Ⅱ 鏡
 1 蛾
 2 悲しい鳥たち
 3 海原の小舟
 4 道化師の朝の歌
 5 鐘の谷
Ⅲ 亡き王女のためのパヴァーヌ
--------------------------
ラヴェル:マ・メール・ロワから 妖精の国*
 *は飯田有抄とデュエット


最前列で聴いたせいもあるだろうが、YAMAHAの鮮烈な音にびっくりした。
いや、聴き慣れた音ではあるのだけど、今日の響は特別に光り輝くような音だった。

見事に調律・整音されて、かなっくホールに「最適化」された音とはこういうものではないか。YAMAHAの魅力を活かし切った演奏ではなかったか。

尤も、かなっくにはYAMAHAしかないという信じられないような台所事情だが、ここで、「最適化」されたSTEINWAY & SONSを聴いてみたいものだ。

で、苦手なフランス音楽。せめてドビュッシーならもっと楽しめたのにと思いながら、後半は船を漕いでいた。

相済まぬことであります。
昨日の「蝶々夫人」についてあれこれ考えて時間を費やしてしまい、寝たのが、明け方5時過ぎだったもの。でも、よく目が覚めて出掛けていけたものだよ。


♪2024-162/♪かなっくホール-08

2025年5月21日水曜日

新国立劇場オペラ「蝶々夫人」

2025-05-21 @新国立劇場



指揮:エンリケ・マッツォーラ
演出:栗山民也
美術:島次郎
衣裳:前田文子
照明:勝柴次朗
再演演出:澤田康子
舞台監督:佐々木まゆり

【合唱指揮】冨平恭平
【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【蝶々夫人】 小林厚子
【ピンカートン】ホセ・シメリーリャ・ロメロ
【シャープレス】ブルーノ・タッディア
【スズキ】 山下牧子
【ゴロー】 糸賀修平
【ボンゾ】 妻屋秀和
【ヤマドリ】 吉川健一
【ケート】 佐藤路子
ほか



ジャコモ・プッチーニ「蝶々夫人」
全2幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約2時間40分
 第1幕        50分
  休憩    25分
 第2幕1場/2場         85分





同一演目を繰り返し観た中では「蝶々夫人」が一番多いはず。音楽も筋書きもとても良くできているからで、宮本亜門版(19年二期会)を除き、がっかりしたことはない。

今日も、楽しんだ、というか、2幕からは、もう張り裂けんばかりの心持ち。感情移入が激しいが、一方で自分ならこう演出したいとクールに考えてみたり、ホンに心休まる暇がないよ。

出来栄え。
終わってみれば、みんなヨカッタのだけど、敢えて苦言を呈すれば、冒頭の前奏曲自体にオケの勢いがなかった。これが東フィル?と思わせる寂しさだった。続く歌唱も意気が上がらない。
ピンカートン、シャープレス。いずれもイマイチ。朗々と聴かせる役ではないけど、役柄に魅力を感じさせない。

小林厚子の蝶々夫人は21年日生劇場劇場版の方が良い出来だったが、2幕以降は熱演。
一番光ったのは、山下牧子のスズキ(を聴くのは4度目!)。誰が演ってもお得な役柄のせいもあるけど。




今日、思いついたこと。
ケイトは出番が少なくて人物像を際立たせることもできないのだけど、観ながら、彼女の心中は如何なものかと考えた。
彼女の演唱の中に、本作の悲劇性を象徴する要素が詰まっているのに、プッチーにはどうしてもう1曲書かなかったのか。あるいは、彼女の苦悩をもっとはっきり見せる演出はできないものか、などと思ったが…難しいな。

それにしても、名誉に生きられない者は名誉に死ぬ。
こんな、如何にも和風の美学を、プッチーにはよくぞ、音楽劇に仕上げたものだなあ。

♪2025-064/♪新国立劇場-07

2025年5月18日日曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 2025-2026 ミューザ川崎シリーズ 第1回

2025-05-18 @ミューザ川崎シンフォニーホール



沼尻竜典:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
清水和音:ピアノ*

ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 Op.83*
ベートーべン:交響曲第6番ヘ長調 Op.68「田園」



川崎も神奈川フィルにっては地元だが、東響との兼ね合いもあるのか、ミューザでの演奏会はFSMuzaや特別演奏会とみなとみらいホールの改修中に限られて、定期演奏会はなかった。

今季から、ようやく待望のミューザ定期だ。
といっても、年に3回では物足りんよ。県民ホール定期の代わりという位置付けなのだろうが、せめて5回に増やしておくれ。

その3回はすべてベートーベンが取り上げられるが、なぜか、今回だけ、ベトのPf協ではなく、ブラPf協2番がカップリングされた。好きな作品だから、これはこれで歓迎だけど、やはりベートーベンで徹底すれば良かったのに。

ブラームスのPf協は、記録にある14年以降で前回が16回目。1番と2番は8:8の互角というのも珍しい。
今日の演奏で、2番が一歩リードしたが、不思議なことに、2番の方が印象に残る演奏が多い。昨秋のオピッツ@日フィル、ゲルシュタイン@都響は、まだ記憶に新しいせいか、とても良かった。

そして、今日の清水和音の演奏もとても楽しめた。
やはり、ミューザのピアノだ。広域はコロコロを明るくころがり、中低域は重くならず、ビ〜ンと響く。
これといったヴィルトォーゾ的なPfの聴かせどころはないのだけど、べらぼうに難しいらしい。全篇がピアノ付き交響曲風でほんに聴き応えのある作品だ。


メインは「田園」だったが、今日に限っては前半がメインという印象だった。
もちろん、丁寧な演奏だし、これといった破綻もなく、水準以上の演奏だった。

ただ、みなとみらい定期ではあくまでも本格を追求して欲しいが、ミューザでは、いわば武者修行みたいなもので、普段やらないような大胆な解釈を聴かせるとか、ちょっと遊んでみてもいいのではないかと思ったよ。

今日のプログラム。とても良かったが、終わって、膨満感に襲われたよ。

♪2025-063/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-04

2025年5月17日土曜日

読売日本交響楽団第141回横浜マチネー名曲シリーズ

2025-05-17 @みなとみらいホール



尾高忠明:指揮
読売日本交響楽団
ラファエラ・グロメス:チェロ*

ドボルザーク:チェロ協奏曲ロ短調 作品104*
エルガー:エルガー:エニグマ変奏曲 作品36
(創作主題による変奏曲「エニグマ」)
----------------------
ハンナ・ハブリレッツ:聖母マリアへの祈り*
(グロメス+Vc4人)





今日の読響の第一声を聴いて、今更ではないけど、昨日の都響@サントリーとえらい違いだなと思った。
例えば、Tuttiの強奏の音を聴きながら、気がついたが、良いオケは全部の楽器の音色が聴こえ、それでいて迫力がある。アンサンブルの悪いオケは大きな音の塊くらいにしか聴こえない。

加えて、サントリーとみなとみらいじゃ勝負にならん。

で、大いに満足できたが、欲を言えば、Vc協は、どうしてエルガーをやらなかったのだろう。しばらく聴いていないので最近エルガーに渇望している。
ドボコンも悪くはないけど、後半プロと併せて考えてもエルガーでしょう…という残念はあった。

グロメスのVcには、不満が残った。
これはもうやむを得ないかもしれないが、音量が小さい。冒頭部分など、ヤニを飛ばす激しさが欲しいが、ひたすら美しく野性味に欠ける。
でも人柄が良さそうで、音楽外に魅力がある。
また、彼女のEncには痺れた。
初めて聴く作曲家ハンナ・ハブリレッツの「聖母マリアへの祈り」という作品だったが、彼女が主旋律を、同時にVcパートから遠藤真理ほか4人が伴奏を担当したVc五重奏が、なんとも美しくて、大儲けのEncだった。


メインの「エニグマ」。
中で一番有名で単独Encピースとしてもよく取り上げられる第9変奏「ニムロッド」が実は、主題、第1変奏、第14変奏に明確な形で登場するし、第6、10、12変奏でもそれらしい旋律の変形が聴こえてくるね。それを探しながら聴くのは楽しかった。よく考えられた謎解きだよ。

♪2025-062/♪みなとみらいホール-011

2025年5月16日金曜日

東京都交響楽団 第1021回 定期演奏会Bシリーズ

2025-05-16 @サントリーホール



クシシュトフ・ウルバンスキ
東京都交響楽団
アンナ・ツィブレヴァ:ピアノ*

【ショスタコーヴィチ没後50年記念】
ペンデレッキ:広島の犠牲者に捧げる哀歌
ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第2番へ長調 op.102
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調 op.47
---------------
ショスタコーヴィチ:24の前奏曲 op.34から 第10番嬰ハ短調






ウルバンスキはかつて東響で何度も聴いた。たまたまかもしれないが、「レニングラード」や「カルミナ・ブラーナ」などの大作を実に面白く聴いたので好感を持っている。

後半の交響曲第5番を楽しみにしていた。

ショスタコの交響曲の中では抜群に聴く機会が多く、3回のうち1回は5番という割合だ。それだけ馴染んでいると、好きになる。確かに若い頃はこれを聴くと血湧き肉躍る感じで、アドレナリンが噴出したものだ。

それで、楽しみにしていたのではない。
なぜか、最近、耳タコのせいかどこが面白いのか分からなくなっているので、じっくり聴いて、昔の興奮を取り戻せないか?が課題だった。

ウルバンスキのオケ掌握は確かで、波のある都響だが、今日は良い出来だった様に思った。

が、やはり、この作品、どこが面白いのか?バラバラな楽想が無理やりくっついている気がしてダメだった。
2度続いたのでかなり重症だ。困ったことだ。


♪2025-061/♪サントリーホール-05

2025年5月14日水曜日

小林沙羅 ソプラノリサイタル ”愛を歌う”

2025-05-14 @東京文化会館



小林沙羅:ソプラノ
福間洸太朗:ピアノ
北村有起哉:朗読


●R.シューマン:
「女の愛と生涯」Op.42から⇒1彼と出会ってから
「ミルテの花」Op.25から⇒24君はまるで花のよう / 7睡蓮の花
●C.シューマン:「愛の春」Op.37から⇒2彼は嵐と雨の中をやって来た
●R.シューマン:「ミルテの花」Op.25から⇒9ズライカの歌
「詩人の恋」Op.48から⇒8もしも花たちが知ったら
●C.シューマン:「愛の春」Op.37から⇒11なぜ他人に尋ねようとするの? / 4美しさゆえに愛するのなら
●R.シューマン:「子どものための歌のアルバム」Op.79から⇒29ミニヨン /「女の愛と生涯」Op.42から⇒4私の指にある指輪よ
●R.シューマン:「リーダークライス」Op.39から⇒12春の夜 /「女の愛と生涯」Op.42から⇒8今あなたは私に初めての悲しみを与えた
●C.シューマン:「六つの歌」Op.13から⇒1僕は暗い夢の中で / 2二人は愛し合っていた / 3愛の魔法
●R.シューマン:「ミルテの花」Op.25から⇒1献呈
***************************************
<独唱版世界初演>
●三枝成彰:「愛の手紙~恋文」から⇒
第3曲 伊藤野枝と大杉栄の往復書簡
第9曲 マリー・アントワネットとフェルセン伯爵の往復書簡
-------ENC---------------------------
山田耕筰(三枝成彰編):「からたちの花」
R.シューマン:「彼だ!」





前半はロベルト&クララ・シューマンの歌曲を朗読入りで聴かせた。
凝ったプログラムで、2人が結ばれるまでの困難を極めた物語を、簡単な道のりと共に愛の往復書簡で紹介し、節目毎にその情感を表す歌が入る。

1曲終わっても誰も拍手はしない。
とてもそんな雰囲気ではない。ドラマは一瞬の緩みもなく続いているから。

小林紗羅は、時にロベルト、時にクララになり切って愛の喜び、悲しみ、苦しさ、迷いを全身を使って表現するので、ドイツ語の歌詞(プログラムには日本語訳)の意味は正確には分からないが、十分彼らの想いが伝わってくる。

クララの父の結婚大反対を訴訟まで起こして勝利し、遂に結婚に至った(ロベルト30歳。クララ21歳)その前後にシューマンは多くの名曲を作曲しているそうだ。
今日のステージは2人の苦難に満ちた、しかし勝利を勝ち得た良き時代までの作品が歌われた。

締めくくりがロベルトの「献呈」だ。
リッケルトの詩だが、まるでロベルトがクララにありったけの愛を注ぎ込んだような作品で、僕は大好きで、小林紗羅もステージでよく取り上げている。

------------------

ロベルトはほぼ4年後(34歳)に精神病を発症し、46歳で亡くなった。
幸福な時期はわずかに4年に過ぎなかった。
その短くも激しく燃えた幸せを「献呈」は歌っている。
僕は、パブロフの犬みたいにこれを聴くたびにウルウルする。

歌と朗読で、シューマン夫妻の愛の悲喜交々(こもごも)も味わいながら、僕も心の動悸を感じていた。

いい歳をして、愛も恋も無かろう…とニヒルに思い直したりもしたが、すぐ、いや、この歳になっても、人を想う心に感動できる自分を幸福だと思い直した。
そうだ、この為なんだ。
これまでいろんなこと・ひと・ものに夢中になってエネルギーを使ってきたのは、こういう気持ちをいつまでも維持したいからなんだ。ふとそう思ったよ。




第二部も灼熱の愛の往復書簡を歌曲に仕立てた三枝成彰の作品が披露された。
第一部がちょうど1時間で、内容的にも極めて充実した時間だったので、もうこれで終わってもいいのに、と思いながらも聴いてみれば、初聴きばかりだったが、これはこれで面白く聴けた。
客席の三枝氏も盛大な拍手を受けて、和やかに終演した。

今年60回目の鑑賞だが、25年前半のピカイチだったな。

終演後のホワイエでは井上道義氏が難しい顔して話し込んでいた。



♪2025-06/♪東京文化会館-06

2025年5月13日火曜日

MUZAランチタイムコンサート 5月 華麗なるヴィルトゥオーゾの世界

2025-05-13 @ミューザ川崎シンフォニーホール



パイプオルガン:梅干野安未(ほやのあみ)
バイオリン:正戸里佳(まさとりか)

J.S.バッハ:フーガ ト長調 BWV577*
G.リテーズ:リート*
F.ショパン(E.イザイ編):ワルツ第14番ホ短調
M.デュプレ:前奏曲とフーガ ト短調 Op.7-3*
T.A.ヴィターリ:シャコンヌ ト短調
----------------
フォーレ:夢のあとに
*オルガンのみ






オルガンにバイオリンという組合せは初めてではないような気がする。

一人一人は名手であっても、この組合せの音楽って、双方の良さを損ない合っているような気がするなあ。

いや、この組合せだけではない。そもそも巨大なOrgと、声楽にせよ、Pfにせよ、管楽器にせよ、本来組み合わないのではないだろうか?

Org+αの演奏を、これまで一度も良いアンサンブルだったと思ったことはないよ。

ヴィターリのシャコンヌは好きな曲だけど、過去にオリジナルのVnとPfの組合せ以外では聴いたことがなかった。

そのせいもあるかもしれないけど、やはりオリジナルの印象が強く、Orgがどんなに控えめでも、全く異なる音楽になってしまうので共感できない。



♪2025-059/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-03

2025年5月11日日曜日

横濱音楽物語3️⃣ ヨコハマ「うた」物語〜「カルメンお美」佐藤美子と横濱の軌跡  森谷真理 ソプラノ・リサイタル with 浦久俊彦

2025-05-11 @フィリアホール



森谷真理:ソプラノ
江澤隆行:ピアノ
浦久俊彦:ガイド

ビゼー:
歌劇『カルメン』から
 ハバネラ(「恋は野の鳥」)
 セギディーリャ(「セビリアの砦の近くの酒場で」)
 ミカエラのアリア「何を恐れることがありましょう」

プッチーニ:
歌劇『ラ・ボエーム』から
 私が街を歩けば(ムゼッタのワルツ)
歌劇『ジャンニ・スキッキ』から 私のお父さん

中田喜直:さくら横ちょう
別宮貞雄:さくら横ちょう
神戸孝夫:さくら横ちょう

ラヴェル:歌曲集『シェエラザード』

サティ:ジュ・トゥ・ヴ
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プッチーニ:歌劇「トスカ」から 歌に生き恋に生き
プッチーニ:歌劇「つばめ」から ドレッタの夢





近代日本の黎明期の西洋クラシック音楽は横浜から始まった。という訳で6年間にわたるシリーズ「横濱音楽物語」の3回目。横浜で活躍した「カルメンお美(よし)」こと佐藤美子の足跡を森谷真理が追う。

この人、全国初の公的コンサートホールである神奈川県立音楽堂の建設に尽力したり、戦時中は横響を引率して音楽挺身隊に従事したと書いてある(Wiki)。横浜の初期音楽シーンに欠かせない人なんだ。

ソプラノの森谷もこうなれば美子の得意のカルメンを歌わなくてはいけない。
ということで、ハバネラやセギディーリャはお客の前では初めて歌ったそうだ(メゾの持ち歌だから)。
そのせいか、前半は、これが森谷の実力か?と思うくらい低調だったが、だんだん良く鳴る法華の太鼓で、調子が出てきて、Encではもう解き放たれたかの如くトランペットみたいな強力な声を出していたなあ。
ああいうの、最初からは出せないんだろうな。
2時間(休憩込み)1人で歌うのだから、セーブしていた力を最終場面で爆発させたんだ。
ま、良かったけど。


♪2025-058/♪フィリアホール-01