2024-04-07 @横須賀芸術劇場
沼尻竜典:指揮
それ以来の「夕鶴」だったが、物語自体は有名な木下順二の戯曲なのでいろんな形で頭に入っている。
横須賀芸劇は、あまり良い印象がないのだけど、今日の神奈川フィル・オペラの出来栄えが好印象に塗り替えた。
前回の神奈川フィル・オペラ「サロメ」も<セミステージ形式>と謳ってあったが、これが<演奏会方式>とどう違うのか、両者の違いに関する確立された見解はないようだが、この2回と、典型的な<演奏会形式>の東フィル・オペラと比べると、神奈川フィル版では、歌手はふさわしい衣装を纏い、舞台を縦横に動き回って演技をしながら歌う。舞台装置は極めて簡素だが一応ある。
したがって、歌手がドレスや燕尾服を着て立ったまま譜面台の前で歌うスタイルに比べるとずっと本舞台形式に近い上演だった。
特に、今回の横須賀芸劇では、ピット部分と客席の前3列を潰して舞台を拡張し、オケの前に相当広いスペースを確保したので、より本舞台に近い感じで観ることができた。
そして演唱と児童合唱とオケが、いずれも見事な上出来で、ぐいぐい引き込まれた。
なんと言っても、我がマドンナ、砂川涼子姫が抜群に良い。
これまでいろんな役を歌うのを聴いてきた。中ではミミやミカエラなどが嵌り役のように思っていたが、違うね。つうこそ砂川涼子にぴったりだ。もう他のソプラノじゃイメージできないくらいの嵌り役だった。
与ひょうの清水徹太郎も、運ずの晴雅彦も、惣どの三戸大久も、終わってみればすべて嵌り役だった。
横須賀芸術劇場少年少女合唱団もきれいな声で大役を果たした。
終盤のつうの最後の歌。
つうが鶴となって飛び立ち、残された与ひょうが痛恨の思いで「つう」と叫ぶシーンは、もうウルウルとしてしまった。
CCで並んだ際の砂川涼子の眼は潤んでいたと思う。オケの面々も心なしか眼を瞬かせていたようにも見えた。
舞台と客席が暖かい空気で一体感を以て繋がった、そんな印象を持った。