2025年8月13日水曜日

新国立劇場オペラ「ナターシャ」 <新制作 創作委嘱作品・世界初演>

2025-08-13 @新国立劇場



指揮:大野和士
演出:クリスティアン・レート
美術:クリスティアン・レート
   ダニエル・ウンガー
衣裳:マッティ・ウルリッチ
照明:リック・フィッシャー
電子音響:有馬純寿
振付:キャサリン・ガラッソ

【ナターシャ】イルゼ・エーレンス
【アラト】山下裕賀
【メフィストの孫】クリスティアン・ミードル
【ポップ歌手A】森谷真理
【ポップ歌手B】冨平安希子
【ビジネスマンA】タン・ジュンボ

【サクソフォーン奏者】大石将紀
【エレキギター奏者】山田 岳



細川俊夫:作曲「ナターシャ」
多和田葉子:台本
<新制作 創作委嘱作品・世界初演>

全1幕〈日本語、ドイツ語、ウクライナ語ほかによる多言語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約2時間35分
 序章〜第4場         70分
  休憩    30分
 第5場〜第7場 55分




不満だらけの新作だった。
そもそも「ナターシャ」と「アラト」は同一価値のキャストでありながら「ナターシャ」というタイトルが既に混乱している。ナターシャにヒロイン性はない。なら、同一に扱って「ナターシャとアラトの地獄珍道中」とでもすべきだった。

津波などで地獄に漂着した二人がなぜ地獄めぐりをするのか分からないし、ナントカ地獄を次々巡るのだが、その意味も分からん。
現代社会の地獄のような様相を切り取って社会批判にもなっているのだろうけど、それが何だよ。
そもそも主人公は漂着しただけで地獄に値する罪は犯していない。いや、なんの罪も犯していないのに、なぜ地獄めぐりなのか?

上方落語の名作「地獄八景(ばっけい)亡者の戯れ」を台本にしてこれに音楽を付けて抱腹絶倒のオペラにしてくれたらなあと切に思ったよ。

電子音楽を含むやかましい魅力のない音響。
客席内にはPAが特別に設置されていたらしい。
歌手もなぜかマイクを使って歌う場面もある。
アリアらしいアリアもなく、2人の主人公らしき男女も場繋ぎの役でしかない。



感心したのは、紗幕の使い方だ。3〜4層に幕を張ってそこにプロジェクションマッピングで状況が表現されるのがとてもよくできている。最後のスモークのコントロールも大したもんだなあ。

ま、そういう舞台装置の工夫には好感持った。
ゼッフィレッリの「アイーダ」なんか、全幕に全面紗幕だが全く意味がない。「椿姫」の最終幕に何で全面紗幕が必要なんだ。そういうつまらない紗幕の使い方が多い中で、今日の紗幕はこういうふうに使うんだ、というお手本のような活用法に胸の痞が降りた感じだ。

ああ、ついに今季も終わったか。有終の美は飾れなかったな。いや、そもそも不作の1年だった。

♪2025-112/♪新国立劇場-13