2025年10月9日木曜日

新国立劇場オペラ「ラ・ボエーム」

2025-10-09 @新国立劇場



指揮:パオロ・オルミ
演出:粟國淳
美術:パスクアーレ・グロッシ
衣裳:アレッサンドロ・チャンマルーギ
照明:笠原俊幸
舞台監督:髙橋尚史

【合唱】新国立劇場合唱団
【児童合唱】世田谷ジュニア合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【ミミ】マリーナ・コスタ=ジャクソン
【ロドルフォ】ルチアーノ・ガンチ
【マルチェッロ】マッシモ・カヴァレッティ
【ムゼッタ】伊藤晴
【ショナール】駒田敏章
【コッリーネ】アンドレア・ペレグリーニ
【ベノア】志村文彦
【アルチンドロ】晴雅彦
【パルピニョール】髙畠伸吾

ジャコモ・プッチーニ:「ラ・ボエーム」
全4幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約2時間50分
 第1幕・第2幕     65分
  休憩       25分
 第3幕     30分
  休憩       20分
 第4幕       30分




粟國版「ラボM」は何度も観ているが、無理のない演出で、安心して観ておれる。
強いて言えば、3幕の紗幕は意味がないけど、強い違和感はない。

歌唱陣は全員良い出来だ。
ミミ役のマリーナ・コスタ=ジャクソンが、えらく派手な容貌で、従来のミミのイメージとはだいぶ異なるので、感情移入が難しかったが、ともかく、歌は良かった。


ロドルフォのルチアーノ・ガンチ(23年シモン・ボ〜)を筆頭に、マルチェッロのマッシモ・カヴァレッティもコッリーネのアンドレア・ペレグリーニもみんな素晴らしい。
招聘外人歌手の出来がこんなに揃って良かったのはホンに珍しい。

日本人歌手も大健闘。
ムゼッタの伊藤晴は素晴らしい。

また、東フィルが冴えていたよ。
もう、ピットの存在を忘れるくらいにオペラと渾然一体。

余談だが、マリーナ・C=Jって、新国立劇場には初登場と書いてあったが、どうも聞き覚えが…。

調べたら18年の新国「カルメン」でタイトルロールを歌ったジンジャー・C=Jの妹なんだ。一番下のミリアム・C=Jもオペラ歌手らしい。

♪2025-134/♪新国立劇場-14

2025年10月3日金曜日

クァルテット風雅 山崎伸子プロデュース 輝く若手演奏家による「未来に繋ぐ室内楽」Vol.9

2025-10-03 @フィリアホール



クァルテット風雅
 落合真子:第1バイオリン
 小西健太郎:第2バイオリン
 川邉宗一郎:ビオラ
 松谷壮一郎:チェロ
山崎伸子:チェロ(特別出演)*


ベートーべン:弦楽四重奏曲第2番ト長調 Op.18-2
シューマン:弦楽四重奏曲第1番イ短調 Op.41-1
オンスロウ:弦楽五重奏曲第15番ハ短調 Op.38「弾丸」*
--------------------
ベートーベン:弦楽四重奏曲第6番から第3楽章





山崎伸子が主導するシリーズ9回目。
前半は若手カルテットによる王道の2曲。

後半は、いつも(だと思う)のように山崎センセイが加わって五重奏なのだけど、コの選曲がなかなか難しい。チェロ2本の5重奏曲はビオラ2本ほど多くはないし、よく演奏されるのが決まっているからなかなか選曲が難しいのかも。

それで、今日はオンスロウという作曲家(1784-1853)の作品で、作曲家の名前も初聴き、音楽も当然初聴きだった。

ベートーべンが1770-1827、シューマンが1810-1856なのでベートーべンより14歳若く、シューマンより26歳年上だ。

音楽は、基本的にはその時代の作品なんだけど、この曲(タイトルが「弾丸」という!)に関しては実に風変わりだ。

自分自身が狩猟中に中で頭を撃ったそうで、その時の痛み(第1楽章)、発熱と錯乱(第2楽章)、回復期(第3楽章)、治癒(第4楽章)を表現している。
そう言われればそうかもという感じだが、調性音楽としては、こんな劇的な内容を表現するには物足りないなと感じたよ。..



♪2025-132/♪フィリアホール-07

2025年9月10日水曜日

横浜交響楽団 第742回定期演奏会 【交響曲の楽しみ②】

2025-09-10 @県立音楽堂



平野桂子:指揮
横浜交響楽団

ロッシーニ:歌劇「どろぼうかささぎ」序曲
ロッシーニ:歌劇「セミラーミデ」序曲
チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調 作品36




プログラムに魅力はなかったけど、指揮の平野桂子さんが楽しみだった。

明るくて、気取りがなく、愛想が良い。横響他アマオケばかりだけど今日で4回目。

自由席なので、いつもは、後ろの方で聴くのだけど、今日は平野さん目当てに、実質7列目の真ん中に陣取った。

それが拙かったのかも。
前半のロッシーニ2曲は、何でこんな曲を選んだのだろうと思うほどバラバラで、いくら平野さんがんばっても無理だよ。
言っちゃあ悪いが音楽以前。

後半のチャイコ4番は、まあ、いろいろと聴かせどころがある曲だから、それなりに収まったか。

でも、アマオケに共通する悩みで、弦の面子が揃わなかったか、弦5部は歪な構成。10型と12型の中間で、全体として原画不足。特にコンバスが3本しか居ないのでは、低音部の厚みが足らなかったよ。

でも、平野さんは終始明るくて良かったよ。陰ながら応援したい。

♪2025-121/♪神奈川県立音楽堂-08

2025年9月6日土曜日

東京シティ・フィル第381回定期演奏会 歌劇「ドン・カルロ」

2025-09-06 @東京オペラシティコンサートホール



高関健:指揮
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
合唱:東京シティ・フィル・コーア

フィリッポ2世:妻屋秀和
ドン・カルロ:小原啓楼
ロドリーゴ:上江隼人
宗教裁判長:大塚博章
エリザベッタ:木下美穂子
エボリ公女:加藤のぞみ
修道士:清水宏樹
テバルド:牧野元美(初聴き)
レルマ伯爵:新海康仁
---------------------------------------------
2023/11/30の「トスカ」の配役
トスカ:木下美穂子◎
カヴァラドッシ:小原啓楼◎
スカルピア:上江隼人◎
アンジェロッティ:妻屋秀和◎
堂守:晴雅彦
シャルローネ&看守:大塚博章◎
スポレッタ:高柳圭

ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロ」
(演奏会形式)【1884年イタリア語版(全4幕 ※第2幕第2場、大フィナーレを除く全曲)】



「ドン・カル」の本舞台経験は1度だけだが、ディスクは6枚も持っている。これらのすべてより(生だからというだけではなく)、とんでもなく素晴らしい出来で、しっかり入魂できた。
歌手陣が、高関健さん曰く「望み得る最高」で、誰も彼も巧いのにはびっくりだ。

本当に適役だったが、好みを言えば、エボリ公女:加藤のぞみ、エリザベッタ:木下美穂子、初聴きのテバルド:牧野元美が見事。女声ばかりを挙げたが男声も文句なし。

オケも、全く不満なし。

こんな素晴らしい公演をたった1回きりとは惜しい。

キャストは2年前の「トスカ」と多くがダブっているが、あの時よりも強く・深く心に刺さった。

こういうのを見せられると、シティ・フィルもやめられそうにないなあ…。

♪2025-120/♪東京オペラシティコンサートホール-08

2025年8月31日日曜日

ミューザ川崎市民交響楽祭2025

2025-08-31 @ミューザ川崎シンフォニーホール



和田一樹:指揮
かわさき市民オーケストラ2025
(幹事オケ:麻生フィルハーモニー管弦楽団)

三舩優子:ピアノ*


レスピーギ:ローマの噴水
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調 Op.18*
レスピーギ:ローマの祭り
---------------
ラフマニノフ:前奏曲「鐘」嬰ハ短調 Op.3-2*
レスピーギ:ローマの松からアッピア街道の松




川崎市内4オケの選抜合同オケ。
ミューザという響きの良いホールのせいもあって、アマオケとも思えぬ巧さ。管楽器のソロも本に上手だ。

レスピーギの「噴水」と「祭り」をやると言うから、いっそ、3部作にしてラフマをカットすれば良かったのに…なんて思いながら聴いていたが、三舩優子のピアノが溌剌として好感。おまけにEncがラフマの「鐘」だった。この曲は、時に聴いてみたくなるのだが、そろそろ聴きたいというタイミングに嵌ってうれしや。

ローマ二部作はいずれも上出来。もう少しオケを大きくできなかったろうか(14型だった)。管弦楽をナマで聴く楽しさだ。

終演したか。と思いきや、袖からゾロゾロ管が入場し、最大規模になってEncが始まった。すぐ分かったよ。
「ローマの松」から「アッピア街道の松」だ。
心憎い選曲。
3部作のおいしいところを全部聴かせて、客席も高揚感で大いに盛り上がった。
「交響楽祭」に相応しい。



♪2025-118/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-20

2025年8月16日土曜日

横浜みなととなみ管弦楽団 第17回演奏会

2025-08-16 @ミューザ川崎シンフォニーホール



児玉章裕:指揮
横浜みなととなみ管弦楽団
混声合唱:東京オラトリオ研究会
みなととなみ「千人の交響曲」合唱団
児童合唱:ゆりがおか児童合唱団

独唱:
 Sp見角悠代
 Sp朴瑛実
 Sp宮原唯奈
 Ms増田弥生
 Alt後藤真菜美
 Tn市川浩平
 Bar大井哲也
 Bs渡部智也

マーラー:交響曲第8番変ホ長調「一千人の交響曲」






その都度メンバーを集めて年に2回程度演奏会をやっているという、横浜みなととなみ管弦楽団。妙な名前だ。回文にするなら「横浜みなととなみ浜横管弦楽団」だろうに。

この聞いたこともないアマオケが「千人の交響曲」をやるって!ほんまかいな?

もちろん千人もいないけどやはり300人くらいは並んでいたかも。概略オケ100人、声楽200人の見当だ。N響でも何度か聴いたが「300人の交響曲」だった。過去に一番大規模なのは神奈川フィルが650人くらいだったかな(合唱が大規模だったということだが。)。

オケも合唱も、ある程度の規模になれば、あといくら増えても限界効用逓減の法則でさほど変わらないので、音楽的には300人くらいでちょうど良いのかもしれない。

とはいえ、大した数だから、アマオケがよくこんなに大勢の奏者、合唱団を集めたものだと感心する。

音楽が始まると、冒頭のオルガンと合唱でもう威圧され、そのまま、この大袈裟な世界に引き摺り込まれて85分間。
音の洪水を楽しんだ。

全体としてざわざわしていたけど、俄づくりのアマオケとは思えない迫力。いや、なかなか上手だったと思うよ。

♪2025-114/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-19

2025年8月13日水曜日

新国立劇場オペラ「ナターシャ」 <新制作 創作委嘱作品・世界初演>

2025-08-13 @新国立劇場



指揮:大野和士
演出:クリスティアン・レート
美術:クリスティアン・レート
   ダニエル・ウンガー
衣裳:マッティ・ウルリッチ
照明:リック・フィッシャー
電子音響:有馬純寿
振付:キャサリン・ガラッソ

【ナターシャ】イルゼ・エーレンス
【アラト】山下裕賀
【メフィストの孫】クリスティアン・ミードル
【ポップ歌手A】森谷真理
【ポップ歌手B】冨平安希子
【ビジネスマンA】タン・ジュンボ

【サクソフォーン奏者】大石将紀
【エレキギター奏者】山田 岳



細川俊夫:作曲「ナターシャ」
多和田葉子:台本
<新制作 創作委嘱作品・世界初演>

全1幕〈日本語、ドイツ語、ウクライナ語ほかによる多言語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約2時間35分
 序章〜第4場         70分
  休憩    30分
 第5場〜第7場 55分




不満だらけの新作だった。
そもそも「ナターシャ」と「アラト」は同一価値のキャストでありながら「ナターシャ」というタイトルが既に混乱している。ナターシャにヒロイン性はない。なら、同一に扱って「ナターシャとアラトの地獄珍道中」とでもすべきだった。

津波などで地獄に漂着した二人がなぜ地獄めぐりをするのか分からないし、ナントカ地獄を次々巡るのだが、その意味も分からん。
現代社会の地獄のような様相を切り取って社会批判にもなっているのだろうけど、それが何だよ。
そもそも主人公は漂着しただけで地獄に値する罪は犯していない。いや、なんの罪も犯していないのに、なぜ地獄めぐりなのか?

上方落語の名作「地獄八景(ばっけい)亡者の戯れ」を台本にしてこれに音楽を付けて抱腹絶倒のオペラにしてくれたらなあと切に思ったよ。

電子音楽を含むやかましい魅力のない音響。
客席内にはPAが特別に設置されていたらしい。
歌手もなぜかマイクを使って歌う場面もある。
アリアらしいアリアもなく、2人の主人公らしき男女も場繋ぎの役でしかない。



感心したのは、紗幕の使い方だ。3〜4層に幕を張ってそこにプロジェクションマッピングで状況が表現されるのがとてもよくできている。最後のスモークのコントロールも大したもんだなあ。

ま、そういう舞台装置の工夫には好感持った。
ゼッフィレッリの「アイーダ」なんか、全幕に全面紗幕だが全く意味がない。「椿姫」の最終幕に何で全面紗幕が必要なんだ。そういうつまらない紗幕の使い方が多い中で、今日の紗幕はこういうふうに使うんだ、というお手本のような活用法に胸の痞が降りた感じだ。

ああ、ついに今季も終わったか。有終の美は飾れなかったな。いや、そもそも不作の1年だった。

♪2025-112/♪新国立劇場-13