2025-07-12 @新国立劇場
【作・演出】蓬莱竜太
【美術】小倉奈穂
【照明】阪口美和
【音響】工藤尚輝
【衣裳】坂東智代
【ヘアメイク】田中順子
【演出助手】橋本佳奈
【舞台監督】下柳田龍太郎
大谷亮介
大沼百合子
関口アナン
田実陽子
坂東希
松本哲也
シリーズ「光景―ここから先へと―」Vol.3
消えていくなら朝
[フルオーディション Vol.7]
Morning Disappearance
予定上演時間:
約2時間5分(休憩なし)
そこそこ売れている劇作家の次男が実家に戻った。
家族全員が揃うのは18年ぶりだ。
次男が次回作で実家の家族模様を描くつもりだと話せば、全員に拒否される。
ぎこちない家族の会話が始まると、表向き平穏な家庭に隠されていたが秘密が次々と白日の下に晒され、我慢も辛抱もつっかい棒が外れ問題が噴出し始める。
全員が心を痛めており、脛には傷、腹に一物。
話せば話す程、絆はバラバラに。
かろうじて保たれていた平和な家族の装いは、逆に身内ならではの容赦ない言葉の礫で丸裸に。
母親はとある宗教に凝り固まっている。
母にとって良い子だった長男は宗教の教えに反して破門・挫折。
一人娘は父親の期待を担って男の子ぶって育ったため、今や女に戻れない!
父親は宗教に準じたかのような母親を許せず離婚を望んでいるが、離婚はその宗教の禁ずるところだ。
そしてその母親は父親のかつての部下男性と親しく付き合っている。
両親のどちらからも疎んぜられた次男はふるさとは遠くに在りて思うものを決め込んでいた。
何の問題もないと思われていた次男が連れてきた唯ひとりの<他人>も、実は問題を抱えていた。
笑える部分も少なからず。しかし、多くは、デフォルメされたこの家族の問題を、身の回りにも見つけ出すことを避けることは出来ない。
笑いつつ、責められ、心には何本もの棘が突き刺ささる。
2018年に観た時の新鮮な衝撃は緩和された(舞台装置・セリフ、演出が変わっていた。)が、傑作であることには変わりがない。
かつて…もう40年以上前に高田馬場の汚い小屋で観たつかこうへい「初級革命講座飛龍伝」(初演)で腸捻転になりそうな笑激に身悶えしつつ、お前はそんな軽い生き方で良いのか!と繰り返し責められ続け、正体なくぼろぼろに泣かされたあの稀有な鑑劇体験はもう二度と得られないと思うが、「消えていくなら朝」は若き日の名作を彷彿とさせるものがあった。
♪2025-095/♪新国立劇場-12