2025年7月11日金曜日

シリーズ「光景―ここから先へと―」Vol.3 消えていくなら朝

2025-07-12 @新国立劇場



【作・演出】蓬莱竜太
【美術】小倉奈穂
【照明】阪口美和
【音響】工藤尚輝
【衣裳】坂東智代
【ヘアメイク】田中順子
【演出助手】橋本佳奈
【舞台監督】下柳田龍太郎

大谷亮介
大沼百合子
関口アナン
田実陽子
坂東希
松本哲也

シリーズ「光景―ここから先へと―」Vol.3
消えていくなら朝
[フルオーディション Vol.7]

Morning Disappearance

予定上演時間:
約2時間5分(休憩なし)





そこそこ売れている劇作家の次男が実家に戻った。
家族全員が揃うのは18年ぶりだ。
次男が次回作で実家の家族模様を描くつもりだと話せば、全員に拒否される。

ぎこちない家族の会話が始まると、表向き平穏な家庭に隠されていたが秘密が次々と白日の下に晒され、我慢も辛抱もつっかい棒が外れ問題が噴出し始める。

全員が心を痛めており、脛には傷、腹に一物。
話せば話す程、絆はバラバラに。
かろうじて保たれていた平和な家族の装いは、逆に身内ならではの容赦ない言葉の礫で丸裸に。




母親はとある宗教に凝り固まっている。
母にとって良い子だった長男は宗教の教えに反して破門・挫折。
一人娘は父親の期待を担って男の子ぶって育ったため、今や女に戻れない!
父親は宗教に準じたかのような母親を許せず離婚を望んでいるが、離婚はその宗教の禁ずるところだ。
そしてその母親は父親のかつての部下男性と親しく付き合っている。
両親のどちらからも疎んぜられた次男はふるさとは遠くに在りて思うものを決め込んでいた。
何の問題もないと思われていた次男が連れてきた唯ひとりの<他人>も、実は問題を抱えていた。

笑える部分も少なからず。しかし、多くは、デフォルメされたこの家族の問題を、身の回りにも見つけ出すことを避けることは出来ない。
笑いつつ、責められ、心には何本もの棘が突き刺ささる。

2018年に観た時の新鮮な衝撃は緩和された(舞台装置・セリフ、演出が変わっていた。)が、傑作であることには変わりがない。



かつて…もう40年以上前に高田馬場の汚い小屋で観たつかこうへい「初級革命講座飛龍伝」(初演)で腸捻転になりそうな笑激に身悶えしつつ、お前はそんな軽い生き方で良いのか!と繰り返し責められ続け、正体なくぼろぼろに泣かされたあの稀有な鑑劇体験はもう二度と得られないと思うが、「消えていくなら朝」は若き日の名作を彷彿とさせるものがあった。


♪2025-095/♪新国立劇場-12

横浜バロック室内合奏団定期演奏会114回 〜イタリアの輝き

2025-07-11 @みなとみらいホール



横浜バロック室内合奏団
 Vn:小笠原伸子、鈴木絵由子、橋本弥香、犬飼美奈
 Va:河野理恵子
 Vc間瀬利雄
 Cb:大西雄二
 Cemb:林則子

ピアノ:堀由紀子

ビバルディ:合奏協奏曲集作品3「調和の霊感」から
 第1番 4つのバイオリンの為の協奏曲二長調 RV549
 第8番 2つのバイオリンの為の協奏曲イ短調 RV522
 第10番4つのバイオリンの為の協奏曲口短調 RV580
 第11番 2つのバイオリンの為の協奏曲ニ短調 RV565
ビバルディ:バイオリン協奏曲集「四季」から作品8-2ト短調「夏」RV315
モーツァルト:ピアノ協奏曲第12番イ長調 K.414(弦楽四重奏伴奏を元に)
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モーツァルト:メヌエット




◀️感想省略▶️


♪2025-094/♪みなとみらいホール-19

2025年7月9日水曜日

かなっくの響きを楽しむチェンバーミュージック 「奏」Vol.1

2025-07-09 @かなっくホール



新日本フィルハーモニー交響楽団チェロ部門
 弘田徹:Vc
 飯島哲蔵:Vc
 佐古健一:Vc
 佐山裕樹:Vc
 サミュエル・エリクソン:Vc
 多田麗王:Vc
 山内創一朗:パーカッション*


[第一部]
パッヘルベル:カノン
ワーグナー:エルザの大聖堂の入場
ポッパー:レクイエム
ビゼー:カルメンメドレー

[第二部」
フンク:組曲二長調
J.シュトラウス:皇帝円舞曲*
メタリカ:Master of Puppets*
(編曲:鈴木隆太、弘田徹)
ビートルズ:Let it be*
(編曲:山口尚人)
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アメリカン・パトロール




新日フィルVcの弘田徹クンはかなっくHとの付き合いは長いが、今年度からはのクリエイティヴパートナーに任命されて、早速の自主企画を開催することにしたそうだ。

かなっくHの響の良さを新日フィルのメンバーにも知って欲しい、神奈川県下で演奏機会の少ない新日フィルを横浜のお客様にも親しんでいただいて新規のファンを獲得したい、というような趣旨らしい。

新日フィルからVcが5人とティンパニストがかなっくに集合した。

前半は、Vc6人だけ、後半の3曲とEncにパーカッション(ドラムセット)が入った。

同じ楽器の6重奏となると、表現力の面で不足に感じやすいものだけど、Vcは高域も低域も頃良い音域なので、成立するんだろう。Vn6人じゃ面白くないけどVcなら12人でも音楽になる。

とは言え、良い編曲に恵まれないとその良さは発揮できない。
今回も、物足りないものもあったが、概ね、同一楽器の合奏とは思えない多彩な響きを聴かせてくれた。
演奏面では、ちょっと音程の怪しい部分もあったけど。

「奏」Vol.1というからにはVol.2もあるんだろうな。

♪2025-093/♪かなっくホール-09

2025年7月8日火曜日

午後の音楽会第177回 第9回ベートーベン国際ピアノコンクールアジア受賞者コンサート

2025-07-08 @リリスホール



小松さくら:ピアノ(E部門第2位)*
本田純鈴:ピアノ(E部門第1位)**

本田純鈴】
シマノフスキ:4つの練習曲 Op.4
ドビュッシー:12の練習曲 第3番「4度音程のために」
ベートーベン:幻想曲 ト短調 Op.77

【小松さくら】
ベートーベン:ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 Op.110
リスト:巡礼の年 第1年 「スイス」S.160/R.10 A159から第6曲 「オーベルマンの谷」
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ハイドン:ソナタ ハ長調 Hob.XV1:50から第1楽章**
J.S.バッハ:フランス組曲第1番からアルマンド 二短調*






◀️感想省略▶️




♪2025-092/♪リリスホール-04

2025年7月7日月曜日

オペラ「蝶々夫人」〜高校生のためのオペラ鑑賞教室

2025-07-07 @新国立劇場



指揮:城谷正博
演出:栗山民也
美術:島次郎
衣裳:前田文子
照明:勝柴次朗

【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【蝶々夫人】 伊藤晴
【ピンカートン】村上公太
【シャープレス】近藤圭
【スズキ】 花房英里子
【ゴロー】 糸賀修平*
【ボンゾ】 三戸大久
【ヤマドリ】 吉川健一*
【ケート】 佐藤路子*
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*は5月本公演でも同役で出演

新国立劇場 高校生のためのオペラ鑑賞教室 2025
ジャコモ・プッチーニ「蝶々夫人」
全2幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約2時間35分
 第1幕                50分
  休憩            25分
 第2幕1場/2場 80分






「蝶々夫人」は一番鑑賞回数の多いオペラだ。何度観ても面白いけど、何度観ても納得いかない…ということはさて置いて、残念なこと3点。

①蝶々さんの自決場面に子供を出す栗山演出の意図が分からん(いつものことだが)。

②鑑賞教室のチケットはいつも取るのが超困難で、席を選ぶなんてことはほぼ不可能。今回は1階では21列しかなかった。この辺りは謂わば音響の死角だ。同じ1階でも中央列とはまるで別世界だ。響いてこない。音が遠い。
1階18列以降の5列は単に舞台から遠いだけではなく、2階席の床下に潜り込む形なので間接音が遮断される。普段は買わない席だが本公演の1/4の料金なので…それに本来高校生のための公演なのだし文句は言えないか。

③実年齢18歳くらいの歌手の蝶々夫人を観たい!

♪2025-091/♪新国立劇場-11

2025年7月5日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第409回横浜定期演奏会

2025-07-05 @みなとみらいホール



原田慶太楼:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団
阪田知樹:ピアノ*

ラフマニノフ:ヴォカリーズ Op.34-14(管弦楽版)
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 Op.43*
ラフマニノフ:交響曲第2番ホ短調 Op.27
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フフマニノフ(阪田知樹編):ここは素晴らしい処 Op.21-7





オール・ラフマプロで、しかも重量級だよ。時間的にはヴォカリーズが無くてちょうど良いくらいだったが、これもなかなか味わい深い。実に多様な編曲版を聴いているが、原曲は多分聴いたことがないような…。
今回の管弦楽版は声楽部分がVnの独奏だった。

次がパガ狂。先月、アヴデーエワ+N響@NHKホールで聴いたばかりで、これが非常に好印象だったが、今日の阪田クンも負けてはいない。ま、ホールの違いが大きい。やはりみなとみらいHで聴くと管弦の混ざり具合も頃よし。特に、スタインウェイが本来の煌めきを放っている。

昨日、紗良=オットをサントリーで聴いたが、彼女の力演にもかかわらずひどい音にうんざりしたが、今日、みなとみらいで聴くと本来Pfの音はかくあるべしだと痛感する。

交響曲第2番。
重厚長大な音楽だが、聴く機会が多く、今年は既に2回目。それで、だいぶ馴染んできた。
今回の日フィルの演奏は、原田氏の彫琢がだいぶ行き渡っている感じで、これまでになく、構成が分かりやすくだいぶ音楽が入ってきたような気がした。

3-4-5の3日間で4オケ定期を聴き、最後がこの日フィルだったが、やはり日フィルは一皮剥けて高水準だなあと思った。
Aクラス3つの中に入る。

♪2025-079/♪みなとみらいホール-18

2025年7月4日金曜日

東京都交響楽団 第1023回 定期演奏会Bシリーズ

2025-07-04 @サントリーホール



カリーナ・カネラキス:指揮
東京都交響楽団
アリス=紗良・オット:ピアノ*


ラヴェル:ピアノ協奏曲ト長調 作品83*
マーラー:交響曲第1番ニ長調「巨人」
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アルヴォ・ペルト:アリーナのために*






ベルリン・コンツェルトハウスのJマルヴィッツを彷彿とさせるKカネラキスがかっこいいの。

加えて独奏Pfが久しぶりの紗良・オットがピアノ以上にステージングのうまさで全客席を吸引した。CCでは舞台と袖を何度も行ったり来たりしたが、その都度ドレスを少しつまんで駆け足だ。ひるがえるドレスの足元は素足だ。なんて色っぽい。
素足の演奏家は、他にVnコパチンスカヤや都はるみも裸足だったよ…と脱線したが、演奏も上手いのだろうが、身振り手振り大きく、(過剰に)愛想を振り撒いて好感。この人の魅力はCDでは伝わらない。生に限る。

後半のマラ1は都響も健闘。しかし半月前のコバケン日フィル@みなとみらいHに比べるとまずはサービス精神が不足してワクワク感が乏しかった。聴いた時の体調にもよるけど、ホールもイマイチだからな。

実は、これを5日(今日)に書いている。5日も日フィルで大曲を聴いた(みなとみらいH)。
都響の巨人もみなとみらいで聴けばもっと好印象だったろう。

酷かったのは、いつもながらPfの音で、僕の耳にはトイ・ピアノくらいにしか聴こえない(席は最高の場所だと思うけど)。
4日のマチネをすみとりで、小林愛実のショパン1番。
4日のソワレをサントリーで、紗良・オットのラヴェル。
5日はみなとみらいで阪田知樹のラフマのパガ狂。
と連続してPfと管弦楽の協奏を聴いたが、サントリーのPfがダントツにしょぼいのは今日に始まったことではないけど、ホンに何とかならんのだろうか。

サントリーくらいの権威になると誰も声をあげないのか。まったく裸の王様だよ。

♪2025-089/♪サントリーホール-08

新日本フィル:すみだクラシックへの扉#30

2025-07-04 @すみだトリフォニーホール



熊倉優:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団
小林愛実:ピアノ*

ショパン:ピアノ協奏曲第1番ホ短調 op.11*
ドボルザーク:交響曲第9番ホ短調 op.95 B.178「新世界から」
----------------
ショパン:夜想曲第20番嬰ハ短調「レント・コン・グラン・エスプレッショーネ」遺作*





2年半ぶりに小林愛実を聴く。ショパンPf協第1番。
これが期待以上に良かった。好みに合っているというか。

以前は感情過多で表情も八の字眉毛。音楽がコッテリした印象だったが、聴く度に余計なものが取れて、今日なんか若くして枯淡の境地か。
淡々と奏でて表情も殆ど平常モードだ。Encのショパン夜想曲20番なんか叙情的にしようと思えば、もうデレデレにでもできそうだが、情緒を抑えてとてもサッパリと弾いて、これも良かった。

後半の「新世界から」は熊倉くんが、こちらも情緒を煽るようなこともなく淡々とオトナの構成だった。そもそも、楽譜どおりで十分粘着質なので殊更に表情を付けなくとも良いのではないか。

オケは昨日のシティと同じような印象だった。
破綻はない。そこそこ良い出来だ。さりとて透明感に欠ける。強奏では各パートの音色が団塊に聴こえてしまいがち。

2025-088/♪すみだトリフォニーホール-03

2025年7月3日木曜日

東京シティ・フィル第380回定期演奏会

2025-07-03 @東京オペラシティコンサートホール



松本宗利音:指揮
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
上野耕平:サクソフォン*

ドボルザーク:交響詩「英雄の歌」作品111
ミヨー:スカラムーシュ 作品165*
逢坂裕:アルトサクソフォン協奏曲
(上野耕平委嘱作品)*
ブラームス:交響曲第2番二長調 作品73




同じホールで4日前に読響を聴いた。
こう言っちゃ悪いが、オケの出来は断然読響がよろしい。
しかし、席が違った。

シティ・フィルはお気に入りの指定席だが読響の場合は横浜定期の振替だったので、今日と同じ列だが右翼席だった。
それで今日の第一声を聴いた時に、おお、これだよ!と思った。左右のバランスが取れているということがこんなに精神衛生に良い事かと痛感した。

どこのホールでも、左右翼席でも20列前後まで下がればそんなに気にならないだろうが、僕の場合列もほぼ中央なので席番がセンターからズレると音までズレて聴こえるから神経に負担が大きい。


さて、今日シティの出来は如上の事情もあってとても好スタートを切って、最後まで楽しめた。


指揮の松本宋利音は初めてだったろうか?
この妙な名前には見覚えがあるので聴いたことがあるような気もするが、ざっと記録を当たったが出てこない。「宋利音」は「シューリヒト」と読むそうだ。
これじゃ子供の頃は揶揄われて大変だったろうなあ。

指揮ぶりはとても好感した。
まったく奇を衒うところが無く、大好きブラームスでは僕の頭の中で出てくるママが「実演」されているようにシンクロできた。

まあ不満もある。弦のざわめきがもっと線一本に収斂しないものか。それとダイナミックレンジが例えば60-100位の範囲に感じたが、せめて30-100位にならんものか。よく鳴るホールだけにTuttiではパート毎の旋律が全部「合計」して聴こえるよ。

♪2025-087/♪東京オペラシティコンサートホール-07

2025年6月29日日曜日

読響 第278回 日曜マチネシリーズ

2025-06-29 @東京オペラシティコンサートホール



セバスティアン・ヴァイグレ:指揮
読売日本交響楽団
児玉隼人:トランペット*

ロッシーニ:歌劇「ウィリアム・テル」序曲
ヴァインベルク:トランペット協奏曲変ロ長調 作品94*
サン=サーンス:交響曲第3番ハ短調 作品78「オルガン付き」
-----------------
シャルリエ:36の超絶技巧練習曲から第1番*





「序曲」の冒頭のVc5人の独奏がモヤモヤとはっきりせず、こりゃダメだ!と思った。
最初に躓くと、立て直しが容易ではない。中盤以降面白くはなったが、とても読響とは思えない。

2曲目。ちょうど1W前のM.ブルネロがプログラムの半分をヴァインベルクの作品に充てていたが、最近、ちょいちょいこの作曲家を聴く機会がある。
その初聴きのTp協が結構面白くて気分を取り直した。
作品の面白さと以上に、独奏した16歳の児玉隼人の妙技に唸らされた。
楽器と身体は一体になって、道具を操るというより、彼が歌ったままが楽器から出ているという感じで、これにはびっくり。

後半、サン=サーンスのガン付き。ま、どのオケが誰の指揮でやってもまずは楽しめる作品だけど、ここへきて読響は弦の透明感とブラスの凄まじさが相まって、上出来だった。

ただし、今日は、振替の右翼席で、目線の先はVaの最後列とCb群だ。旋律を弾くVn1は遥か下手で、時々リズムの刻みがずれているように聴こえた。

それで読響の力演にもかかわらず三半規管が故障しているような気分にさえなった。

♪2025-086/♪東京オペラシティコンサートホール-09

2025年6月22日日曜日

マリオ・ブルネロ 無伴奏チェロ・リサイタル

2025-06-22 @フィリアホール



マリオ・ブルネロ:チェロ


M.ヴァインベルク:無伴奏チェロ・ソナタ第1番 Op.72
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調 BWV1008
M.ヴァインベルク:無伴奏チェロ・ソナタ第2番 Op.121
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007
---------------------
M.ヴァインベルク:24の前奏曲から第21番
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番からサラバンド

ミェチスワフ・ヴァインベルク⇒1919-1996
J.S.バッハ⇒1685-1750




ブルネロは放送録画では何度も聴いているけど、生演奏は初めてだったが、今回は、ナマの凄さを痛感した。

なんと言っても音がいい。これぞチェロの音だ。こんなに豊かな音色はずいぶん久しぶりで、思い出すのは東京春祭で何度か聴いたベルリン・フィルの室内楽の、あのチェロの音に近い。

フィリアホールとの相性が良かったのか、もちろん楽器もとても良いものなんだろうな。

M.ヴァインベルクの無伴奏(1919生)とJ.S.バッハ(1685生)の無伴奏を交互に演奏した。

前者のチェロ作品は初めて聴く(Pfソナタはアヴデーエワで聴いたことがあったが、名前はすっかり忘れていた。)。
もちろん現代作品なので、最初は無調というか、音程もしかと定まらない感じで始まったのでひょっとして微分音を使っているのかと思ったくらいだったが、徐々に旋律らしきものが浮かび上がってくると、まあ、普通の現代音楽で、ショスタコと親交が深かったそうだが、ショスタコ印がところどころに顔を出す。ブルネロはこの作品をJ.S.バッハ以後の最重要な作品群と言っているが、その深さは分からない。

バッハを弾くときは、実に丁寧なアプローチで、何か、深遠な世界に連れてゆく気なのか?と思ったりしたが、こちらにそれだけの鑑賞眼はないけど。

しかし、こういう演奏を聴けて本当に良かったと思った。いつも本物の演奏を聴いているはずだけど、今日のブルネロの、特にバッハは正しく本物の音楽で、しみじみと美しかった。


Encもこの両者の作品だった。
驚いたのは、ヴァインベルク:24の前奏曲から第21番という作品だ。これは冒頭から、ショスタコのVc協とそっくりだ。似てしまった、というレベルではなく、確信的に模倣している。オマージュなのかもしれないけど、冗談みたいに聴こえたな。

♪2025-085/♪フィリアホール-04

2025年6月21日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 Dramatic Series 楽劇「ラインの黄金」

2025-06-21 @みなとみらいホール



沼尻竜典:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

青山貴⇒ヴォータン
黒田祐貴⇒ドンナー
チャールズ・キム⇒フロー
澤武紀行⇒ローゲ
妻屋秀和⇒ファーゾルト
斉木健詞⇒ファフナー
志村文彦⇒アルベリヒ
高橋淳⇒ミーメ
谷口睦美⇒フリッカ
船越亜弥⇒フライア
八木寿子⇒エルダ
九嶋香奈枝⇒ヴォークリンデ
秋本悠希⇒ヴェルグンデ
藤井麻美⇒フロースヒルデ

Dramatic Series
ワーグナー:楽劇『ニーベルングの指環』序夜
「ラインの黄金」<セミステージ形式>

全1幕〈ドイツ語上演/日本語字幕付〉

予定上演時間:
約2時間30分(休憩なし)




過去鑑賞分を含め最上の「ラインの黄金」だった。
冒頭の、ラインの水煙や水の流れを表す低音の持続音に少しずつ音が重なって同じ音形を繰り返しながら徐々に音量を増すところの緊張感がまずは見事で、弦も管も美しい。
弦は16型で、総勢100人以上いたのではないか…特大編成のオケが、ピットとは異なり、見事に明瞭に唸る様が実に聴きものだった。みなとみらいホールの鳴らせ方を熟知している沼さんと神奈川フィルの最良の演奏を聴いた思いだ。

今後、「ワルキューレ」〜と全作を是非ともやってほしい。

残念だったところは、P席と左右の舞台周りのRA、LAを潰したのなら、そこをうまく活用してもっと芝居に立体感を持たせられなかったか?
照明もかなり大掛かりな機材が別途持ち込まれていたが、プロジェクターマッピングも駆使できなかったか?



歌唱は1人を除いてとても良かった。
最初はラインの乙女から始まるが、これが良い出来で、もうすっかり惹き込まれた。

残念なのは、ヴォータンと並んで大役のアルベリヒ役の志村文彦で、一人だけ譜面台にしがみついていた。これでは芝居が流れない。この神奈川フィルのDramatic Seriesの第1作「サロメ」でも一人だけ譜面台を持ってうろうろしたのがいたが、この場合は急遽の代役だったからやむを得ない。しかし、今回は代役でもないのに譜面台はよくない。また彼の舞台は何度も聴いているが、歌唱そのものも以前の巧さが感じられなかった。

ま、そこは目を瞑って、全体としてはまたとない優れた演奏・演唱だった。



ところで。
2時間半は長すぎるよ。5時間を超えるオペラもあるけど、必ず幕間休憩が入るもの。1幕もので150分は最長だと思うな。

♪2025-084/♪みなとみらいホール-017

2025年6月20日金曜日

横浜弦楽四重奏団 横浜みなとみらいホール定期演奏会 Vol.08

2025-06-20 @みなとみらいホール



横浜弦楽四重奏団
 Vn:小笠原伸子、有馬希和子
 Va:百武由紀
 Vc:間瀬利雄
Pf:堀江真理子*


モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番変ロ長調 K.458「狩」
フォーレ:ピアノ五重奏曲第1番ニ短調 作品89*
ドビュッシー:弦楽四重奏曲ト短調 作品10
------------------
ラヴェル:水の戯れ*
ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女(SQ版)





モーツァルトは定番だが、今日は珍しくフォーレ、ドビュッシー、ラヴェルとフランスものがメインだった。

モツ「狩」の出来も良かったが、客演ピアニストを招いたフォーレのPf五重奏曲第1番が素晴らしかった。
初めて生で聴いたが、魅力的な音楽だこと。

ピアノの堀江真理子さんは初めてだったが、演奏者、教育者というだけではなく、フォーレに関しては相当な専門家?らしい。上手い下手は分からないけど、冒頭の柔らかいアルペジオが実に美しく、それにVn2が主題を載せるのだけど、これも良い感じで、もう最初に引き込まれてしまうと、大抵最後まで良い感じで終わるものだ。

この作品は、また聴いてみたい。

ピアノの独奏Encがラヴェルの「水の戯れ」。これは聴く機会が多いが、ぼんやりした戯れではなく明瞭な戯れで、ピアノの魅力を味わった。

SQのドビュッシーは、その前の演奏が良すぎて少し曇ってしまったが、EncではやはりそビュッシーのPf極をSQ版にした「亜麻色の髪の乙女」が、これも良かったね。



♪2025-083/♪みなとみらいホール-016